日本古代呪術①女性と家

東洋哲学

久しぶりに手に取りましたが、やはり面白くてページをめくる手が止まらなくなりますね。

あまりにも内容が濃すぎて一言ではまとめられない本ですが、ざっくり言うと〈日本の暮らしや祭祀における呪術性を、斬新な切り口で解き明かしていく本〉です。

評価されている学者ではありますが、その一方で著書の内容に関しては「吉野氏の強引な考察では?」とも言われています。

「日本の民俗学の祖・柳田國男に足りなかったものは、女性原理である」と、持論を唱えた吉野氏。

当時はまだまだ男性優位社会であり、学問においてもそれほど女性原理についてフォーカスされなかった時代の中で、この発刊はなかなか勇気あるものだと思います。

確かに五行論・陰陽二元論に関しては、ちょっと無理やりすぎないかなぁ?こじつけでは?と思う文章もあるのですが、女性原理について説いた部分に関しては、なるほど!と頷く部分も多々あります。


現代日本では女性も社会進出してバリバリ働いている方も多い時代ですが、昔はそうではなく〈男は仕事、女性は家庭〉と言われていました。

若いZ世代には、この〈男は仕事、女性は家庭〉という考えは「古臭い」と捉えられがちですが、ご年配の方と話しているとやはり男女共にまだこの考えを根底に生活をしている方が多い印象を受けます。


しかし、何故〈男は仕事、女性は家庭〉と言われているのか、疑問に思いませんか?

ということで、本書の家と女性の切っても切れない関係性について述べている部分を抜粋して、簡潔にまとめてみました。


古代日本において家は最小世界であると同時に、家という限られた空間は母胎を象徴するものと意識されており、家は単純に雨風を防ぐ便(よすが)であるばかりでなく、一つの重要な呪物であった。

「屋造り」は結婚の前提条件となり、家は祭りの場にさえもなる。

須佐之男命は大蛇退治のあと、奇稲田姫を娶るが、その前に日本最古の和歌「八雲立つ 出雲八重垣 妻籠みに 八重垣つくる その八重垣を」を詠んで須賀宮をつくっている。

このように、結婚には必ず屋造りのことがつきまとう。


「奄美大島では婚礼を世のはじまりと称し、一族の重大な儀式として厳かにこれを行う。婚礼を根引祝ともいう(茂野幽考『奄美大島民俗誌』)」

婚礼=世の始まり、根引きであるという奄美にのこる意識はおそらく古代日本人の意識であり、婚礼が世の始まりをしめすこと、であれば家は世の始まりをしめすもの、であった。

家は母の胎の造型であり、家の中央に女性を据えることは家の呪力を明瞭に発揮させることになる。家屋に活気をつけるのは女であり、呪術的に女性は家を離れることができなかった。 

というのが、吉野氏の考察です。

他にも、釜戸→凹みを意味することから女陰を象徴するものであり、家の代表となるものがカマド=女性というのも、おもしろかったですね。

家屋における東=神座ー男の座、西=人間の座ー女の座、というのも気学の象意にも当てはまるので、頷きながら読み進めていました。

〈男は仕事、女性は家庭〉の役割分担の背景にはもちろん他にも理由がありますが、吉野氏は家と女性は呪術的に密接な関係にあると述べているのが、非常に興味深いですね。

吉野氏の考察に沿うと、現代日本では家と女性における呪術的要素が薄れている、と考えるべきではないでしょうか。

本書における他の内容は、まとめ次第また随時更新していきます。


〜あとがき〜

「八雲立つ〜」は大好きな和歌です。須佐之男と奇稲田姫を祀る島根県松江市の縁結びの神社として有名な八重垣神社や、同じく松江市の熊野大社に参拝した時は何故か感激して涙が止まらなくなるほどでした。

熊野大社に関しては、有名な紀伊国の熊野三山へ松江の熊野大社が勧請されたという説と、全くの別系統とする説があるそうです。社伝では熊野村の住人が紀伊国に移住したときに分霊を勧請したのが、熊野本宮大社の元であると言われています。

出雲大社も素晴らしいのですが、個人的に熊野大社が好きで祐気旅行で松江に行った時は必ず訪れています。須我神社には、以前通行止めで行けなかったのでまたの機会に。

そして初めて参拝してから大分経ってから知ったのですが、今では知名度・参拝者数共に出雲大社の方が断然上ですが、大昔は熊野大社の方が有名だったそうです。

熊野大社で手に入れた奇稲田姫にちなんだ円い櫛を大切に使っていたのですが、いつの間にか紛失してしまいました。

南アフリカの指輪もそうですが、祐気先で購入したものはことごとく失くなっていきますね。単に私の管理の問題なのか、身代わりになってくれたのか。

真相は定かではありませんが、大切に使っていて肌身離さず身につけている物には、自分自身の気が移りやすいとも言います。

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