頻尿・膀胱炎
トイレで何度も夜中に目が覚めると、睡眠も浅くなります。頻尿のために、外へ出かけるのも心配になります。せっかくの外出や旅行先でも、トイレがどこにあるかを調べておかないと安心できません。下腹部の違和感、痛み、おしっこをした後の尿道の痛み、変なにおい、尿に血が混じることもあります。
友人や家族に気軽に相談しにくいというのも、そのつらさの一つです。簡単なケアで症状が良くなることも多いので、是非ご相談ください。
頻尿の原因
腎臓で作られた尿は膀胱に貯められますが、それが一定量になると、排出するように脳へ指令がいくのが尿意です。
膀胱の内面には移行上皮という粘膜で覆われていますが、膀胱内に炎症などがあると、膀胱粘膜を過敏にし、すぐに尿意を感じさせます。
膀胱での蓄尿は、健常者で300~500cc(膀胱容量:500cc)で、尿意は200~300ccほどでおこります。頻尿は、それほど尿がたまっていないのに、何度も頻繁に尿意を感じさせます。
過活動膀胱という言葉をよく聞きますが、排尿筋をはじめ勝手に神経が活動する、ということは考えられません。活動するのは、何らかの信号があるからです。尿検査の数値に現れない微小な炎症であっても、その信号は伝えられます。さらにその炎症がひどくなると、膀胱炎となります。
膀胱炎とは
一般に「膀胱炎」といわれているほとんどが、大腸菌などの細菌性によるものです。身近にある菌なので、免疫力が落ちた時に発症しやすいです。膀胱炎になると炎症による傷で尿が濁ったり、血が混じることもあります。炎症は、熱は上がらないのが特徴です。身体構造上の違いから、女性に多い疾患です。尿のたまる膀胱から尿の出口までの「尿道」の長さには男女差があり、成人女性は3〜4cm、成人男性は18〜20cmとなっています。女性は尿道が短いため、尿が漏れやすく、また菌も入り込みやすいので膀胱粘膜への炎症も起こりやすくなります。
そしてこの菌がさらに上り、膀胱より上の尿管を伝わって腎臓にまで炎症が起こると、高熱の出る「腎盂腎炎」にもなります。
腎盂腎炎を繰り返すと腎臓のはたらきが低下し、ひどい場合は腎不全に陥ることもあります。また、膀胱炎は再発の多い病気です。炎症による、膀胱粘膜の状態が関係しています。そうならないためにも、膀胱炎は早めに対策し、菌に動じない強い粘膜を作ることが大切です。
間質性膀胱炎
間質性膀胱炎とは、細菌感染を伴わない、慢性の膀胱炎症です。細菌によるものではないので、抗生物質を飲んでも良くなりません。激しい頻尿と、膀胱尿道部の痛みが特徴です。原因は、ウイルス、細菌感染による膀胱壁損傷、自己免疫反応などいろいろ言われていますが、明確な原因は判明しておらず、治療法も確立されていません。内服薬治療、膀胱内注入療法、水圧拡張、電気刺激法、外科的治療と、患者さんの症状や状態により様々です。
トイレの回数だけでもつらいのですが、他にも、膀胱まわりの痛みがあります。骨盤周囲、下腹部、大腿部…これらの症状は、変化し、動作時に顕著であることから、筋・筋膜性のものもあります。その痛みには、鍼灸治療が効果的です。
そして、筋筋膜性疼痛も原因は内臓にあります。膀胱鏡検査によると膀胱内にも間質性膀胱炎に特徴的な点状出血や潰瘍が認められることがあります。膀胱を中心とした下腹部臓器の環境を良くすることが、根本的原因の対策に繋がります。
頻尿・膀胱炎の鍼灸治療
膀胱粘膜の炎症を鎮めることと、からだ全体の免疫力を高めることが重要です。膀胱の反応点を施術し回復することで、膀胱の炎症を鎮め尿の回数が減っていきます。膀胱内の環境を改善すると免疫力が高められるので、症状が出にくくなります。
また、子供の夜尿症(おねしょ)も同様に考えられます。子どもや、鍼治療が不安な方は、刺さないローラー鍼による施術を行ないます。
また、膀胱の慢性炎症は、自律神経を介して、腰下肢の筋肉を緊張させるので、腰やひざの痛みを誘発します。この筋緊張は、血行を悪くし、冷えを起こすこともあります。冷え症の方に、頻尿をよく訴えられる方が多いのもこのことからです。したがって、腰や膝まわりのコリや痛みをとることも対策となります。
夜間頻尿
夜間頻尿とは、夜間に排尿のために1回以上起きなければならないこと、それにより困っている状態のことをいいます。加齢とともに頻度が高くなり、夜間頻尿は日常⽣活において支障度の高い症状です。
対象となるのは、夜間排尿が2回以上の人ですが、中には1時間ごと、あるいはもっと頻繁ににトイレに行くいう方もおられます。
横に寝たときに頻繁に尿意をもよおすようになるのは、体勢によって膀胱内の尿が膀胱粘膜内に触れる部位が変わることも考えられます。炎症部に触れれば神経は活動し、尿意を感じるようになります。
その夜間頻尿は、短命という報告もあります。死亡率が高くなる原因としては、夜間頻尿に関連する基礎疾患(高血圧・糖尿病・脳血管障害・腎泌尿器疾患・睡眠障害)の影響や、夜間トイレに行くことによる転倒・骨折の影響も考えられています。ただの年のせい、として見過ごせません。きちんと手当てをすれば、良くなるものです。対策して、そのリスクを減らしましょう。
尿漏れ
尿のトラブルは、人に打ち明けるのに少し抵抗がある方も多いと思います。症状を気にしていると、何事も消極的になってしまいます。しかし、それは決して恥ずかしいことではなく、対策できるものです。まずはその悩みを打ち明けることから始めましょう。尿もれは、ほとんどが次の二つのパターンかその両方になります。
① 切迫性尿失禁
我慢できない尿意が起こり、コントロールできずに尿もれしてしまう状態で、主に過活動膀胱が原因になります。わかりやすく言えば、膀胱が敏感になっている状態です。膀胱が敏感になっていれば、すぐにトイレに行かねばと感じるようになるので、頻尿にもなります。鍼灸治療が効果的です。
② 腹圧性尿失禁
せき、くしゃみをした瞬間や、重いものを持ったりの力んだ瞬間に尿もれしてしまいます。出産や骨盤手術、尿道の位置の異常により、尿道を閉める筋肉が弱まることがあります。その原因として、膀胱を支える骨盤底筋の衰えがあります。緩んだ筋肉は、トレーニングで鍛えることもできます。
ただ、尿をためることと、出すことのコントロールがうまくいっていないことにも原因があります。それは、意識して調節できるものもありますし、無意識にコントロールされるものもあります。いわゆる自律神経と呼ばれるもので調節されています。鍼灸では、それを乱すものにアプローチし対策していきます。