逆子と邪気論

鍼灸

逆子の原因には子宮・胎盤の異常や羊水の状態、胎児の形態異常など様々ですが、はっきりと原因が分からないものもあります。妊娠中に一時的に逆子になったとしても、自然と戻る場合もあります。

私自身が、逆子で産まれてきました。

母が妊娠6〜7ヶ月の時に骨盤位(逆子)になり、体操などをしても結局戻らず、単殿位(V字型に前屈したような状態)で産まれました。この単殿位の場合は、自然分娩が可能な場合が多いです。

東洋医学では「逆子には至陰(しいん)!」というほど、鍼灸師なら誰もが知っている特効穴があります。実際に逆子治療でお灸をする際に多く用いられているツボですが、その機序は明らかではありません。

棒灸で胎動が増える、温灸による子宮動脈の血管抵抗が低下した、という例が報告されていますが、棒灸・温灸は台座灸と比較した場合、熱刺激量、時間共に大きいのが理由かと推測しました。

また、動物での実験結果はヒトの場合と必ず一致している訳ではなく異なる見解が示されているものもあり、生物的な身体構造の違いなのか、それとも別の理由なのかは分かりませんでした。

学生時代に読んで、逆子について印象に残っていた本の中に、奥平明観先生の「邪気論」があります。

東洋医学でいう邪気とはなんなのか?という説明から症例まで、詳しく記載があります。

邪気論より抜粋 膀胱付近の邪気

邪気が上下にある場合

この本によると、逆子は母親の腹部の邪気を感じ取り、大切な頭部を守るためにあえてその体勢をとっている、というものでした。当時の私には目から鱗の内容で、印象に残っていました。

上の図は解剖学的にいえば膀胱付近に邪気が発生しており、これは逆子が起きる基本パターンであり、奥平先生によるとほとんど経験上例外は無かったので間違いないの無い事実であると考えられる、とのこと。もう一枚の図は胎児の上下に邪気が存在する場合です。

本を読み進めていくと、終盤には「邪気論にも限界がある」と、記されています。

どういう事かというと、古典的病が中心だった当時と、現代とでは時代的相違があり、悪性・良性腫瘍、アレルギー・自己免疫疾患、膠原病、器質的疾患、遺伝子レベルの疾患に関しては、「邪気を発生しない病」に分類されるのでそもそも診断ができない、という内容でした。

反応点治療では、母胎の環境を良くすることが結果的に逆子を元に戻すことに繋がると考えています。妊娠中の母親の状態が胎児に影響を与えるので、できるだけストレスを軽減させた生活を送ることが赤ちゃんのためにもなります。

 前述した通り自然分娩が可能な場合もあるので、逆子が全部ダメという訳ではありません。しかし骨盤位だと出産リスクを伴うこともありますから、できれば安心した状態で、頭を下向きにして出てきてほしいものです。妊娠中の方にもセルフケアとしてのローラー鍼は、オススメしております。強すぎないソフトな心地よい刺激が、身体に作用するのです。

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